人間に比べて、犬が鼻血を出すことはあまりないので、見つけたらビックリしてしまいますよね?
犬が鼻血を出すというのは、結構大変な状況だったりします。
いざという時に慌てないように、犬の鼻血の原因について知っておきましょう。
この記事では特に、鼻腔内腫瘍について詳しくお話ししていきます。
鼻血が出る病気
犬が鼻血を出す時には、どんな病気が考えられるのでしょうか?
鼻の中の傷
何かの原因で鼻の中に傷ができたり、どこかにぶつけて鼻骨を骨折した場合に鼻血が出ることがあります。
この場合、急に大量の血が出るのが特徴です。
鼻腔内腫瘍
外傷がないのに少量の出血が長期間続いたり、片方の鼻から出血する場合が多いです。
あとから詳しくお話ししますが、鼻腔内腫瘍には腺がん、扁平上皮ガン、繊維肉腫、悪性リンパ腫などがあります。
感染症
アスペルギルス、クリプトコッカス、リノスポリジウムなどの感染症の症状の一つとして鼻血が出ることがあります。
血液と膿が混じったドロッとした粘液が出るのが特徴です。
他に基礎疾患がある場合
甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、多血症、多発性骨髄腫、血管炎などがあると、その症状の一つとして鼻血が出ることがあります。
血小板の異常
血小板減少症、血友病(AおよびB)、フォンヴィルブランド病などの症状として、鼻血が出ることがあります。
また、殺鼠剤などに含まれるワルファリンによる中毒や、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の副作用でも血小板に異常が出ることがあります。
血小板の異常の場合は、一度出血するとなかなか止まらないのが特徴です。
歯槽膿漏
歯周病を放っておいて悪化すると歯槽膿漏になり、鼻から出血することがあります。
老犬になると歯槽膿漏になりやすいので注意が必要です。
興奮
あまり根拠はありませんが、興奮して鼻血が出るということを経験する飼い主さんは多いみたいです。
いずれの場合でもくしゃみや咳、鼻づまり、呼吸が荒くなるなどの症状が同時に出ることが多いです。
鼻血が出る病気は結構たくさんありますが、人間と違って深刻な病気が多いんですね。
鼻腔内腫瘍とは?
ここからは、鼻腔内腫瘍について詳しくお話ししていきたいと思います。
鼻腔内腫瘍の特徴
鼻腔内腫瘍とは、その名の通り鼻の中にできもの(腫瘍)ができることを言います。
犬は人間に比べて体の表面に腫瘍ができやすいと言われていますが、鼻の中に腫瘍ができるケースは多くありません。
鼻腔内腫瘍は、犬の腫瘍全体の2%に満たないと言われています。
レアケースではあるものの、罹ってしまうととても厄介です。
鼻腔内腫瘍はほとんどが悪性で、診断も治療も難しいとされています。
これは、鼻の中の腫瘍が肉眼で見えないことや、他の腫瘍と違って脳への影響などから広範囲の切除手術が難しいからなんです。
鼻腔内腫瘍は短頭種よりも長頭種に多く発症するといわれていて、日本ではシェットランド・シープドッグの症例が非常に多いようです。
他にはミックス犬やシベリアンハスキーなんかも症例が多いようですが、原因ははっきりと分かっていません。
年齢で見ると、9歳から10歳くらいの高齢に差し掛かった頃に発症する例が多いです。
これは、がんなどの腫瘍全般に言えることですね。
鼻腔内腫瘍の種類
一口に鼻腔内腫瘍といっても、いくつかの種類があります。
症例としてよく見られるものを挙げてみます。
- 腺がん
- 上皮扁平がん
- 繊維肉腫
- 悪性リンパ腫
- 骨肉腫
どれも悪性の腫瘍(がん)ですね。
この中でも犬の症例として多いのは腺がんと上皮扁平がんです。
上皮扁平がんは、全身の皮膚にできるがんです。
犬では鼻腔、副鼻腔、口腔、扁桃、肺、爪、股間などに多く見られます。
メスよりもオスの方が発症しやすい傾向があります。
腺がんは皮脂腺の細胞が腫瘍化するもので全身に発症しますが、耳や鼻、肛門の周りなどによく見られます。
表面が平らで滑らかなしこりができ、急激に大きくなるのが特徴です。
放置すると潰瘍ができることもあります。
鼻腔内腫瘍の症状
鼻腔内腫瘍にはいくつか種類がありますが、その症状は共通するものが多いです。
例えば、次のようなものが良く見られます。
- 鼻からの出血
- 鼻汁
- くしゃみ
- 顔面の腫脹
- 目やに
- 口腔異常
- 眼球突出
- 呼吸困難
鼻血や鼻水などの症状は片方の鼻腔のみに出ることが多く、少量の出血が長期間続くことが特徴です。
長い間鼻水が止まらず、お薬でもなかなか良くならないと思っていたら実はがんだった、ということがよくあります。
また、鼻の中にできものができるので、苦しくなって鼻をフガフガと言わせるような呼吸になったりします。
感染症や基礎疾患がある場合と違い、鼻腔内腫瘍の場合は他に目立った症状が出ないことが多いです。
ワンちゃんも元気にしているので、飼い主さんはもちろん、病院でもなかなか診断が付かない場合もあります。
眼球突出や顔が左右非対称になったりして初めて腫瘍を疑う場合も多いようです。
鼻腔内腫瘍の対処法
鼻の中に傷ができただけなら、鼻水や鼻血の症状は安静にすれば治ります。
運動を控えて様子を見てみましょう。
それでも良くならない場合は、鼻腔内腫瘍や他の病気の可能性があります。
また、鼻の片方から鼻血や鼻汁が出るときも要注意です。
片方の鼻からの出血は、鼻腔内腫瘍でよく見られる症状です。
鼻血や鼻水などの症状が長期間続く場合には、鼻腔内腫瘍を疑って病院を受診しましょう。
レントゲンだけでは見つからないことも多いので、CTやMRIの検査をしてもらいましょう。
なかなか発見が難しく、症状が数ヶ月から半年以上も続いてようやく診断がつくことも珍しくありません。
場合によってはセカンドオピニオンも検討すると良いかもしれません。
治療について
鼻腔内腫瘍は皮膚の腫瘍と種類は同じですが、皮膚と違って簡単に切除手術ができません。
そのため、薬物療法や放射線治療がメインになります。
放射線治療は、犬が動かないように全身麻酔で行います。
ただし高齢犬での発症が多いので、全身麻酔はその分体への負担も大きいです。
犬の年齢や健康状態、症状の進み具合によって、獣医さんと治療方針をよく話し合って決めることになります。
完治が難しい場合も多いので、無理な手術を行わずにワンちゃんを最後まで見守ってあげようという飼い主さんも多いようです。
鼻腔内腫瘍は他の部位に転移しやすいため、早期発見と早期治療が大切です。
腫瘍があっても比較的ワンちゃんも元気に過ごせるので、なるべく腫瘍が小さいうちに見つけてあげたいですね。
いかがでしたか?
鼻腔内腫瘍はレアケースで、発症してもワンちゃんが元気なことも多いので、ついつい見逃してしまいがちです。
長引く鼻水や片鼻からの出血が見られたら、ぜひ病院で詳しく検査してもらいましょう。
完治は難しいですが、ワンちゃんの苦痛を和らげてあげることでまだまだ元気に楽しく暮らせることも多いです。
早期発見・早期治療を心がけましょう!