犬のガンは見つけにくいといいます。
発見時にはだいぶ進行していることが多いようです。
早期発見で取り除ければ完治の可能性もあるのですが、進行してしまったガンに対してそれを完全に抑えるというのが、現在の時点ではまだ難しいというのが現状のようです。
ここでは、放射線や化学療法、漢方などの代替治療など、様々な犬のガン治療の方法や費用についてお話しします。
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犬のガン治療とQOL
以前は、しこりやできものができたからとりあえず切除、ということが多かったようです。
しかし近年は、犬の体に負担をかけないためにも、精密検査をして今後のことを決めていくという人間の治療に近い形になりつつあります。
また、犬のガンは、人間の場合以上に、家庭でのケア(消毒など)が必要になることが多いといいます。
愛犬の尊い命のためにも、ベストな方法をとりたいものです。
そういった場合に、切っても切り放せないのがQOLという価値観です。

QOLとは?
QOLは、Quality Of Lifeの略で、「生活の質」と訳されます。
これはガンなどの病気に対してだけでなく、生活全般に使われ、「生活の質」を尺度としてとらえるものです。
犬のガン治療におけるQOLは、ガン治療のための化学療法・放射線治療などによる生活の質の低下(犬が犬らしく暮らせない)ことに対して、
「動物の心身をできるかぎり快適に保ち、快適さを向上させることこそが治療にとってもっとも重要である」
(引用:http://pet-kenko.org/2011/08/ahccqol.html)
という考え方に基づくものです。
QOLが低下することにより、免疫力や生命力の低下をもたらす可能性もあります。
この考え方は、治療法を選択するにあたって大きく関わってきます。
ガンの進行段階と治療
一般的に考えられている、進行状況に対する治療法です。
- 第一期(ステージ1) 根本治療が可能。手術で腫瘍を切除し、ガンの根絶を目指します。
- 第二期(ステージ2~3) 緩和治療。すでにガン細胞が移転していて根本治療は難しい状態です。ガンの増殖を抑え、生活に支障が出ないように健康維持を目指します。
- 第三期(ステージ4~5) 対処治療。治療よりも痛みを抑えることに重点をおく。飼い主さんと犬が快適な暮らしを遅れるよう、QOLの向上を図ります。
犬のガン治療方法と副作用について
犬のガン治療は、基本的には次の4つがあげられます。
- 外科治療
- 化学療法
- 放射線治療
- 代替治療
それぞれ、どのような治療法なのでしょうか?

外科治療
転移がなく局所的にできた腫瘍や、取り除くことが可能な場所にできた腫瘍を手術により切除する方法です。
そのまま再発・転移がなければ完治しますが、術後に再発・転移するケースも少なくはありません。
《外科治療と副作用》
副作用はありませんが、デメリットとして全身麻酔があげられます。
手術は上手く行っても、麻酔から覚めなくて亡くなったケースもあるようです。
化学療法
抗がん剤などの薬剤で、ガン細胞の増殖を抑える方法です。
抗がん剤治療
外科手術での切除が難しい場合や、術後の治療の一環としてとられる全身的な治療です。
ガン細胞の増殖が抑制され、腫瘍の縮小や成長の遅延が期待されます。
悪性度の高いガンに対しては比較的効果があるともいわれていますが、寛解後でも再発するケースもあります。
《抗がん剤治療の副作用》
人間の場合よりも軽度ではありますが、食欲低下や吐き気・嘔吐など副作用もみられます。
ステロイドによる治療
リンパ腫(全身性の血液のガン)の場合、ステロイドを使った全身的治療が施されます。
ステロイドは抗がん剤ではありませんが、沈痛や消炎効果に即効性があり、リンパ腫の治療に効果が期待できます。
《ステロイドの副作用》
長期投与により、糖尿病を引き起こす場合があるといいます。
また他にも、多飲多尿、免疫力低下、副腎機能低下などを引き起こす可能性があります。
放射線治療

外科治療だけでは治療が困難な場合に、放射線でガン細胞にダメージを与えて、ガンの進行を遅らせたり死滅させたりする局所的な治療です。
一般的には、週5回ほどの治療を1ヶ月くらいかけて継続的に行います。
ただ、腫瘍の種類によっては放射線治療を施しても成長が止まらない場合もありといいます。
また、放射線治療ができる病院は、まだ数少ないそうです。
《放射線治療の副作用》
治療する部分と放射線量によって副作用の出方が違います。
放射線の影響によって、一時的に脱毛や皮膚炎などの皮膚障害が起こることがあります。
これは約2~4週間ほどで自然治癒するそうです。
また、脳や骨髄などの神経組織、骨、筋肉、肺、心臓などの細胞が放射線により傷つくと、組織の壊死や機能低下などが見られることがあります。
そういった場合は、永久的な障害として残ってしまう可能性があります。
代替治療【免疫療法】
免疫細胞を、ガン細胞に特化して攻撃するようコントロールする治療法です。
他の治療の後に再発・移転を防ぐために使われます。
ガン細胞の成長抑制や延命効果がみられるといいます。
《免疫療法の副作用》
副作用やリスクがほとんどなく、体に優しい治療法です。
QOLを向上させるための代替療法として注目されています。
代替治療【漢方薬】
ガンに漢方は全く効かない!という声もあります。
しかし、比較的体力のある子たちなら西洋医学でも治療でしていくことができるのですが、体力の落ちてしまった犬には漢方でのサポートが効果的ともいいます。
漢方の場合、ガン細胞よりも自分の免疫力を強くしてあげることでガンを抑えるという考え方ですので、体力の落ちてしまった犬に副作用などの体の負担をかけずに対処していくことができます。
漢方薬治療の良いところは、元気が衰えることなくガンの痛みも抑えて、最期までQOLを下げることなく生活を送れることだといいます。
実際、延命できているケースもありますし、亡くなるとしても穏やかに最期を迎えられているようです。
犬のガンには、アガリスクやメシマコブという漢方が効果があるといいますが、その子の体質などもありますので専門医に相談することをおすすめします。
最後に、ペットのガン治療にかかる費用について…
愛犬のためになんとかしてあげたいけど、費用面の心配もあるともいます。
ペットに対しては保険が効かないため、全額実費負担となります。
一般的にいわれているガン治療の費用を調べてみましたので、ご参照下さい。
- 外科治療(切除術) 数万~数十万円
- 抗がん剤治療 2~4万/回
- 放射線治療 1~5万/回 (週5回の4週間で20回というのが一般的なようです)
- 免疫療法 3~6万/回
- 入院費 2000~5000/日
犬の、「人権」ならぬ「犬権」も、だいぶ考えられてきているのですね。
ワンコたちが家族の一員だと認められてきているという証拠でしょう。
いざという時には、ワンコにとってのベストな状態をとってあげたいものです。