皆さんは、トリミングサロンや動物病院でお手入れしてもらった時、
「肛門腺、溜まってましたから、きれいにしておきましたよ~」
「おしりがかゆそうだったので、肛門腺、絞っておきました」
なんていわれたことはありませんか?
トリミングサロンでは、必ず肛門腺を絞ります。
こうもんせん?なんて初めて聞いた!なんて方もいらっしゃるはず。
実はこの肛門腺、慣れればご自宅でも簡単にお手入れできる場所なのです。
わんちゃんのお手入れは難しそう?
いえいえ、そんなことはありません!
わんちゃんのお手入れは、お家で簡単にできるのですよ!
今回は、お家でできる簡単お手入れ「肛門腺」についてお話します。
お手入れすることでわんちゃんとの触れ合いも増え、今よりもずっと仲良しになったり病気の早期発見になったりといいこと尽くしですよ。
肛門腺って何?
肛門腺(こうもんせん)という言葉を初めて聞いた方もいらっしゃるかもしれませんね。
わんちゃんをお散歩させているときに、わんちゃんのお友達に会うと、お尻の付近の臭いをかぎあって挨拶していますよね。
このあいさつの仕方は、わんちゃん1匹1匹違う臭い物質を鼻でかいで、わんちゃんの個体を識別するものです。
嗅覚が鋭いわんちゃんですので、その臭いを嗅げば、どのわんちゃんなのか識別できるのですね。
その臭いの元が出てくる場所が、肛門の左右にある「肛門腺/こうもんせん」という臭腺なのです。
よくスカンクが敵に襲われた時に臭い液を飛ばすなんて聞いた事があると思います。
これもわんちゃんと同じように、肛門の左右にある肛門腺からの分泌液を飛ばすのです。
そして臭いの元をためておく袋を「肛門嚢/こうもんのう」といい、肛門の両脇に存在します。
肛門嚢の位置は、肛門を中心として時計の針を思い浮かべるとわかりやすく、アナログ時計の8時と4時の位置に2つあります。
わんちゃんの毛で覆われているので、肉眼で穴が開いているとまでははっきりとはわかりません。
わんちゃんの大事な肛門チェック3つ!
健康なわんちゃんの肛門をのぞいてみましょう。
分泌液が無く、きれいに引き締まっているはずです。
健康なわんちゃんや大型犬は、肛門腺から臭いの元である分泌液がうんちをする時などに自然に排出されます。
しかし、この肛門付近は常にうんちや泥などが付着することが多く、炎症を起こしやすい場所でもあります。
寄生虫がいたり、直腸の異常も肛門を見ればわかります。
チェック項目は3つ
- 肛門付近が腫れて赤くなっていないか
- 肛門から赤い物が出ていないか
- 肛門から白い虫が出ていないか
肛門付近が腫れて赤くなるのは、皮膚炎を起こしている証拠。
肛門嚢炎や肛門周囲腺炎にかかっている可能性があります。
肛門から赤い物が出ている場合、脱肛(だっこう)と言って、肛門から粘膜の一部や直腸がはみ出してしまった状態です。
ひどい場合は外科手術を行うか、食事療法で便秘を治すと排便時のいきみが弱くなり、腸が外へ出る事が無くなります。
肛門から白い虫が出ている場合、わんちゃんの体の中に寄生する虫がいる証拠。
サナダムシや条虫などがわかりやすいでしょうか。
下痢や体重減少、毛づやが無くなるなどの症状もありますので、見つけた場合は動物病院に行って、内部寄生虫を駆除するお薬をもらいましょうね。
肛門の病気2つ
肛門腺を絞らなかったり、お手入れをしなかった場合は、どんな病気になるのでしょうか。
代表的なものを2つあげます。
肛門嚢炎
肛門嚢から肛門腺に繋がっている管が、何らかの原因で閉じてしまったり、分泌液が肛門嚢内に異常に溜まってしまうと、細菌感染が生じます。
慢性的な軟便や下痢を起こしているわんちゃん、小型犬や肥満犬で肛門括約筋などの筋肉の緊張力の低下によっておこります。
この肛門嚢炎にかかってしまうと、わんちゃんがしきりにお尻を気にしてなめまわしたり、肛門部を地面や床に擦り付けて歩いたりします。
この肛門嚢炎がひどくなると、発熱や食欲低下などが起こり、外に出られなくなった肛門嚢に溜まった膿が外へ無理やり出る「肛門腺破裂」が起きてしまいます。
出血とともに、皮膚が破れ、膿が排出されますが非常に痛みを伴います。
肛門周囲瘻孔
肛門周囲の換気が悪く、いつも便などの汚物によって浸潤していると、その場所にある毛穴や汗腺に細菌感染が起こり、皮膚炎が起きます。
この皮膚炎が進行して膿などが形成されると、慢性経過ののちに皮膚に穴が開いてしまい、異臭を放つ膿性の液体を常に放つようになります。
この穴は化膿菌毒性によって皮膚が無くなり、穴が多数開くようになります。
その状態がさらに進行すると、穴がアリの巣のようにつながるようになり、皮下組織や筋肉、直腸や腹腔にまで達することもあります。
わんちゃんの肛門腺絞りは必要?
結論から言いますと、必要です。
以前、わんちゃんがまだ野生だったころ、肛門腺の分泌液は必需品でした。
肛門腺からの臭いを敵に襲われた時に噴射したり、自分の縄張りを主張するために使用していたのです。
しかし、現在はわんちゃんは人間と暮らしています。
敵に襲われる心配もなく、自分で意識して肛門腺からの分泌液を出さないようになったために必要以上に溜まってしまいます。
もともと小型犬や高齢のわんちゃんなどは、分泌液を外に出すための肛門括約筋が鍛えられていないので、人間が絞ってあげないと溜まる一方になってしまうのです。
やってみよう!肛門腺絞り
では、お家で簡単にできる肛門腺しぼりを紹介します。
ここで特に気を付けて欲しい事があります。
それは「肛門腺からの分泌液はとっても臭い!」という事。
少しでも手に着くと、臭いがずっと取れません!
出来たらシャンプーなどをする時に同時にお風呂場で行って頂きたいですね。
もし高齢犬でシャンプー自体がわんちゃんにとって負担になってしまうようなら、ティッシュを何枚か重ねて行い、分泌液が飛び散らないようにしましょう。
肛門腺絞りのステップは3つ。
- しっぽを持ち上げる
- 肛門から指一本分外側に、アナログ時計の8時と4時の角度の位置に親指と人差し指を添える
- 肛門に向かって下からそっと押し上げる
しっぽを持ち上げると、肛門嚢が膨れている場合ははっきりと触って確認できます。
力を入れすぎるとわんちゃんも痛いので、優しく、ゆっくり、肛門嚢の袋を持ち上げる感じにしてください。
出ないからと言って何度も何度もやると、わんちゃんも負担になってしまうので、出なければ溜まってなかったのねと、また次回挑戦してみて下さい。
わんちゃんの個体によって、肛門腺からも分泌液の色も臭いも様々です。(臭いことには変わりありませんが…)
白っぽい色だったり、茶色っぽい色だったり。
その子独自の色ですので、覚えておいてくださいね。
もし血が出ているような赤色だったり、膿が溜まっている緑色だったら炎症を起こしている可能性がありますので、動物病院にその分泌液を持って行き相談してくださいね。
いかがでしたか?
肛門腺絞り、わかって頂けましたでしょうか。
コツをつかめば簡単にできますので、1か月に1回ぐらいは行うと良いですね。
ちなみに私は、動物病院で肛門腺絞りを行っていた際、分泌液がたっぷり溜まった子と遭遇。
ちょっと力を入れただけで、分泌液が勢いよくティッシュからはみ出て、大量に前に飛んでしまった事がありました。
運悪く、そこには獣医さんの頭が…。
髪の毛が肛門腺の分泌液の臭いに染まってしまった獣医さんに平謝り(;^_^A
消臭剤を縫って一日ごまかしてました。
臭いは強烈ですので、お宅の絨毯などにはつかないよう、注意してくださいね!
長い記事を読んでくださってありがとうございました。
あなたとその隣にいるわんちゃんがもっともっと両想いで幸せになりますよう、願っています!