犬が急に震えや痙攣を起こしたら、とても心配ですよね。
特に痙攣は、初めて見たときにはびっくりして気が動転してしまうかもしれません。
犬の震え・痙攣の原因にはどんな病気があるのでしょうか?
いざというときのために、あらかじめその原因となる病気や対処法について知っておきましょう。
震えや痙攣の原因となる病気
一口に震えや痙攣と言っても、その原因には様々なものがあります。
考えられる原因を挙げてみましょう。
- てんかん
- 水頭症
- 脳障害(脳腫瘍、脳梗塞、脳炎)
- 心疾患(心筋症など)
- 肝機能不全
- 内分泌の異常(甲状腺機能低下症など)
- 尿毒症
- 感染症(ジステンパー、狂犬病、トキソプラズマ、破傷風など)
- 脱水
- 中毒症状
- 低血糖
- 低体温症
- 熱中症
- ホワイト・シェイカー・ドッグ・シンドローム
このほかにも、病気やケガによる激しい痛みが原因で痙攣をおこす場合があります。
病気以外の原因としては、恐怖などの強いストレスで激しい震えや痙攣を起こしたりもします。
また高齢犬の場合、後ろ足や前足に震えが出ることもあります。
主なものを挙げてみましたが、こんなにたくさんの原因が考えられるんですね。
ここからは、特に注意が必要な病気についていくつか例を挙げて詳しくお話ししていきたいと思います。
震え・痙攣の原因として注意が必要な病気
てんかん
てんかんは、痙攣の原因としてもっとも多いとされる神経細胞の異常による病気です。
ほとんどの場合は「特発性(原発性)てんかん」で、多くの犬種に見られる遺伝的な病気です。
幼犬のころから発症する場合が多く、たいていは5歳くらいまでの間に起こります。
その他に、ケガによる後遺症や脳腫瘍、水頭症などの脳の障害によって起こる「二次性(症候性)てんかん」もあります。
症状の出方としては、
- 落ち着きがない
- 神経質になる
- 大量のよだれ
- 嘔吐
などの前兆が見られた後、数分後から数日後に痙攣発作が起こるとされています。
痙攣発作には全身の震えや意識障害が起こる「全般発作」と、体の一部分だけが震える「部分発作」があります。
また痙攣以外にも突然攻撃的になったり、行動異常が見られる場合もあります。
てんかんはこの様な痙攣発作を慢性的に繰り返すのが普通ですが、その程度と頻度は様々です。
一日に何度も痙攣を起こしたり、中には一生に一度だけなんていうケースもあります。
低血糖
低血糖は、血液中の糖分濃度が極端に低下してしまう病気です。
何らかの理由で犬が長時間食事を摂れないことが原因で起こることがありますが、その裏には別の病気が隠れていることも多いです。
生後3か月くらいまでの子犬の場合は、
- 消化管内寄生虫症
- ストレス性腸症候群
- パルボウィルス感染症
などの病気が原因として考えられます。
(子犬の場合は、他にも気温の低下で低血糖が起こる場合もあります)
成犬の場合は、
- ホルモンバランスの異常
- 膵臓の腫瘍によるインスリンの過剰分泌
- 敗血症などの感染症
等が原因で低血糖が発症する場合があります。
また、糖尿病にかかっている犬が治療薬としてインスリンを投与される場合、過剰摂取によって低血糖が起こることも考えられます。
低血糖を発症すると脳にエネルギーが送られなくなり、様々な症状が起こります。
例えば、
- 元気がない
- 体温が下がる
- 下半身の麻痺
- 運動失調
- 痙攣
などです。
低血糖による痙攣の場合は、てんかんによる痙攣に比べるとあまり激しい症状は出ないことが多いです。
脳腫瘍
脳腫瘍は高齢犬になるとよく見られる病気です。
短頭種の犬や、ガンになりやすい傾向にあるゴールデンレトリーバーなどで特に起こりやすいとされています。
脳腫瘍には、
- 脳の細胞が腫瘍化することによってできる「原発性脳腫瘍」
- 他の部位のガンが転移してできる「続発性脳腫瘍」
の2種類があります。
また、脳のどの部分に腫瘍ができるかによって症状は様々です。
何も症状が出ないこともあれば、
- 痙攣
- 運動異常
- 眼振
- 顔面マヒ
などの症状が出たり、食欲がなくなる、または逆に過食になることもあります。
認知症と症状が似ているため、間違えられることもあるのが難しいところです。
震えや痙攣が起こった時の対処法
いくつか例を挙げてお話ししてきましたが、震えや痙攣には本当に様々な原因があります。
症状が震えだけの場合はともかく、痙攣の場合は慌ててしまいがちです。
まずは落ち着いて対処することが重要です。
痙攣が起こったらまず注意すること
痙攣が起こった時に、以下のことに注意してください。
- 体を起こしたり揺らしたりしない
- 静かに声をかけて落ち着かせる(大きな声を出さない)
- 首輪やリードを外してあげる
- 痙攣している場所などを観察する
- 周りに危険な物があれば取り除く(ぶつからないようにするため)
そして、痙攣中は、呼吸を確認したうえで静かに見守りましょう。
また、発作が治まったら嘔吐する可能性がありますので、顔を横に向けてあげましょう。
呼吸停止や心肺停止の場合は早急に対応する必要があります。
1回の痙攣が5分以上続く場合や、意識が戻る前にまた次の痙攣が起きた場合、それから1日に何度も痙攣が起こった場合も危険です。
いずれの場合もすぐに病院に連絡しましょう。
痙攣が治まったら病院を受診しましょう。
痙攣が治まってワンちゃんが落ち着いたら、早めに病院を受診しましょう。
このとき、痙攣が起きた時の状況をなるべく詳しく説明できると良いです。
余裕があればスマホなどで動画を取っておくのも良いでしょう。
痙攣には様々な原因があるため、その後の治療法もその原因によって変わってきます。
飼い主さんがより詳しく状況を説明することで、原因の特定の助けにもなります。
痙攣が治まった後に元気そうにしていたとしても、必ず病院で診てもらうようにしましょう。
もしかしたら重大な病気が裏に隠れているかもしれません。
病気以外の原因による震えの場合
病気以外が原因の場合は、考えられる原因を取り除いてあげましょう。
例えば寒さが原因の震えの場合は、暖かい場所に移動してあげれば震えが収まります。
不安やストレスや恐怖を感じて震えている場合は、まずはワンちゃんを安心させてあげましょう。
優しく抱きしめたり、話しかけてあげてください。
それでも震えが止まらない場合は他に原因が考えられますので、おかしいところがないかよく観察してみてください。
原因が突き止められない場合は、病気のサインの可能性もあります。
そんな時は早めに病院を受診するようにしましょう。
また、骨折や脱臼などのケガの痛みによって震えている場合は、他に症状が出ない場合もあります。
これは、ワンちゃんの性格によるところもあります。
痛みがあってもじっと我慢して耐えるタイプの子もいるためです。
何かおかしいな?と感じたら、まずは外傷がないかをチェックしましょう。
なければ体のあちこちを推してみて、しこりがあったり痛がったりする部分がないか確認してから、病院を受診しましょう。
予防と日常の注意
熱中症や中毒などの場合はともかく、痙攣を予防するのは難しいです。
てんかんなどの、痙攣が起こりやすい病気を持っている場合には日ごろから心の準備をしておきましょう。
また、病気の早期発見のためにも定期的に検診を受けるようにしましょう。
緊急時にすぐに対処できるように日ごろから準備しておくことも大切です。
かかりつけの病院の連絡先や診療時間、時間外の対応ができるかどうかを事前に確認しておきましょう。
また、夜間救急などの連絡先もすぐにわかるところに控えておきましょう。
今回は震えや痙攣についてのお話しでしたが、この記事で挙げた病気には他にも様々な症状があります。
自分のワンちゃんのかかりやすい病気の傾向を知り、それぞれの病気の症状と対処法についてもあらかじめ頭に入れておくと良いでしょう。
震えや痙攣が起きたときに最も大切なことは、落ち着いて対処することです。
そうはいっても、突然目の前でワンちゃんが痙攣を起こしたら慌ててしまうのは仕方のないことです。
少しでも冷静に対処できるように、日ごろからできることは準備しておきましょう。
とっさの時に飼い主さんが冷静でいることで、きっとワンちゃんも安心できると思いますよ。
震えと一緒によく見られる症状についてはこちらの記事にまとめていますので、参考にしてみてください。