人の病気に脳腫瘍があるように、ワンちゃんも脳腫瘍になる可能性があります。
ケガのように、脳の中は目に見えません。
なかなか気づかないことも多いので発見が難しい病気です。
では、大切な愛犬が脳腫瘍になってしまったとき、どのような治療法があるのでしょうか。
動物病院に勤務する立場から、
- 犬の脳腫瘍の治療方法
- 手術・治療費の予算
- 薬・ステロイドの効果
などについて解説してみたいと思います。
ワンちゃんの脳腫瘍とは?
人間の死因の上位にガンがあるように、ワンちゃんの死因の上位にもガン・腫瘍が入っています。
ガンのできる場所はさまざまですが、その中でも脳にできてしまう腫瘍について詳しく見ていきたいと思います。
ワンちゃんの脳腫瘍
ワンちゃんも人と同じで、脳に腫瘍ができることがあります。
脳の中は、体の表面と違って、目に見えないものです。
気づかない間にできてしまっていることが多く、発見も遅れがちになってしまいます。
脳腫瘍には、
- 脳にできた腫瘍そのものが原発であるもの原発性腫瘍
- リンパ腫や血管肉腫など体の一部にできた悪性腫瘍から脳に転移してしまう転移性腫瘍
の2種類があります。
脳にできる腫瘍のほとんどが悪性腫瘍だと言われています。
転移性のものによるのであれば悪性はほぼ確実です。
症状と確定診断
では脳内に腫瘍ができていた場合どのような症状が現われるのでしょうか。
- てんかん発作
- 食欲減退
- 首の斜頸
- グルグル回るなどの行動異常
このような症状が現われた場合は、脳腫瘍を疑うことができます。
また脳の中は目に見えませんので、確定診断にはMRIやCT検査が必要になってきます。
犬の脳腫瘍の治療法
では、ワンちゃんが脳腫瘍になってしまったときには、どのような治療法があるのでしょうか?
これは
- 外科的手術
- 抗がん剤治療
- 放射線治療
- 内服による治療
などが挙げられます。人の治療と同じですね。
手術するには?手術費用はいくら?
では、実際手術をするとなると、どのようなことが考えられるでしょうか。
具体的にみていきます。
手術するには
体にできた悪性腫瘍の場合、転移の可能性を考えて外科的手術でとることが一般的です。
ですが、脳の中にできた腫瘍はどうしょう。
脳の中の腫瘍を摘出するということは、腫瘍の場所や大きさにもよりますが極めて困難な手術です。
また、日本では脳腫瘍の手術を行える獣医師はそんなに多くなく、設備が整っている大きな病院も数が少ないのが現状です。
脳腫瘍の手術費用
ワンちゃんの場合、人と違って保険や高額医療費制度がないので、とてつもない金額の手術費用がかかってしまいます。
任意の保険がないということではありませんが、補償額が脳腫瘍の手術費をまかなえるものではありません。
ワンちゃんの脳腫瘍が摘出可能な腫瘍だったとして、手術費用は病院にもよりますがざっと50万~100万円はかかってしまいます。
手術以外の治療法ってある?
腫瘍は手術でとらないと根本治療にはなりません。
しかし、費用や日本の動物病院の設備を考えて、脳腫瘍を外科的手術で治療するのは、なかなかハードルが高く難しいことかもしれません。
ワンちゃんが高齢ならなおさら手術によるリスクもあります。
こういった場合は、手術以外の治療法も検討されます。
放射線治療や抗がん剤治療
放射線治療は手術と同じく、費用がとても高いものになります。
また技術者が少なかったり、設備のある病院が数少ないのが実態です。
抗がん剤治療は大きな病院でなくても受けることのできる薬物治療ですが、こちらも1回の投薬で2~3万円かかることがある高額な治療となります。
またどちらも
- 吐き気
- だるさ
- 体調不良
などの副作用の症状が現われることが多いです。
ステロイド治療は?その効果について
手術や抗がん剤などの治療が費用面や、ワンちゃんの体力的に難しい場合、ステロイドによる治療を行います。
ステロイドには強い炎症を抑える効果があるので、腫瘍による脳内のむくみや腫瘍そのものの腫れを抑えてくれます。
これによりワンちゃんの痛みやけいれんなどの症状を緩和します。
また費用も他の治療に比べるとだいぶ安く済みます。
これだけ聞くとステロイド治療ってよさそうですよね。
ですがステロイド治療はいいことばかりではありません。
ステロイドの欠点
もちろんステロイドにも欠点はあります。
主な副作用としては肝機能障害です。
症状が緩和されるからといって、大量に長期的に飲むのはとても危険をともないます。
また、根本治療ではないので、症状が緩和しているように見えていても水面下では腫瘍が大きくなっていたりすることもあります。
まとめ
大切な愛犬が脳腫瘍になってしまったら、とても辛いですよね。
なるべく長く生きられるよう、また痛みを抑えてあげたいと思うのが飼い主さんの気持ちだと思います。
腫瘍の治療に正解はありません。
どんなによい治療だと思ってもワンちゃんにとって辛く苦しいものもあるからです。。。
できるだけワンちゃんの気持ちに寄り添い、ベストな治療方法を見出してあげる。
それが飼い主さんの役目ではないでしょうか。